動物にも人間と同じように血液型が存在し、それぞれの種ごとに異なる分類がされています。
犬や猫、馬をはじめとする多くの動物には独自の血液型の種類があり、輸血を行う際には適合性が重要視されます。
また、ゴリラやナマズのように、特定の血液型しか持たない動物もいます。
この記事では、動物の血液型の分類方法や輸血時の注意点、血液型の進化や性格との関連性について詳しく解説します。
動物の血液型に関する豆知識や興味深い事例も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
- 動物の血液型の種類と分類方法
- 各動物の血液型の特徴と輸血の適合性
- 血液型が性格や進化に与える影響
- 動物ごとの血液型の分布や興味深い豆知識
動物の血液型とは?種類や特徴を解説

- 動物の血液型の基本と分類方法
- 血液型の種類が多い動物とは?
- 1種類しかない血液型を持つ動物
- A型やO型が多い動物とは?
動物の血液型の基本と分類方法
動物にも人間と同じように血液型があり、それぞれの種ごとに異なる分類方法が採用されています。
人間の血液型は「ABO式」と「Rh式」で分類され、A型・B型・O型・AB型の4種類に分けられます。
一方で、動物はそれぞれ独自の分類方法を持っており、血液型の数も異なります。
血液型は、赤血球の表面にある「抗原」と呼ばれるタンパク質によって決まります。
抗原は血液の性質を決定する重要な要素であり、輸血の際に適合しない血液が体内に入ると拒絶反応を引き起こす原因となります。
これは、体が「異物が侵入した」と認識し、免疫システムが攻撃するためです。
そのため、輸血をする際には、事前に血液型の検査を行い、適合する血液を選ぶ必要があります。
動物ごとの主な血液型の分類方法は以下の通りです。
犬の血液型:DEA式(Dog Erythrocyte Antigen)
犬の血液型は「DEA式」と呼ばれ、国際的に標準化されています。
DEAとは「Dog Erythrocyte Antigen(犬赤血球抗原)」の略で、現在確認されている血液型は8種類から13種類とされています。
その中でも特に重要なのが「DEA1.1」の型です。
犬は一頭で複数の血液型を持つことがありますが、DEA1.1(+)の犬とDEA1.1(-)の犬では輸血時の相性が異なります。
DEA1.1(-)の犬にDEA1.1(+)の血液を輸血すると、拒絶反応が起こる可能性があるため注意が必要です。
猫の血液型:AB式
猫の血液型は「AB式」と呼ばれ、人間と同じA型・B型・AB型の3種類に分類されます。
しかし、人間と異なりO型は存在しません。
日本の猫のほとんどはA型であり、B型は約5%、AB型はさらに少数派とされています。
猫の輸血は非常に慎重に行う必要があり、異なる血液型を輸血すると強い拒絶反応が起こるため、輸血の前に必ず適合性を確認することが重要です。
馬の血液型:A・C・D・K・P・Q・Tの8種類
馬の血液型は非常に複雑で、「A・C・D・K・P・Q・T」の8種類の抗原が確認されています。
これらの抗原の組み合わせにより、理論上3兆通り以上の血液型が存在するとされています。
馬の血液は、他の動物と異なり、異なる血液型同士を混ぜてもすぐには固まらない特徴があります。
そのため、他の動物よりも輸血の適合性が高く、比較的安全に輸血ができるとされています。
しかし、完全に拒絶反応がないわけではなく、輸血を行う際はユニバーサルドナー(輸血用の馬)を用いることが推奨されます。
血液型の種類が多い動物とは?
血液型の種類が特に多い動物として代表的なのが馬です。
馬の血液型はA・C・D・K・P・Q・Tの8種類の抗原によって分類されており、これらの組み合わせによって3兆以上の異なる血液型が存在すると考えられています。
牛も血液型の種類が多い動物の一つです。
現在9種類の血液型が確認されており、その組み合わせの多さから、輸血時の適合性を見極めるのが難しいとされています。
犬も血液型の種類が比較的多く、国際基準としては8種類から13種類が存在するといわれています。
特に「DEA(Dog Erythrocyte Antigen)式」と呼ばれる分類が採用されており、DEA1.1・DEA1.2・DEA3~DEA13の血液型が確認されています。
輸血時にはDEA1.1(+)とDEA1.1(-)の違いが特に重要になります。
1種類しかない血液型を持つ動物
動物の中には、複数の血液型を持つ種もいれば、1種類しかない動物もいます。
このような動物は、同種間で輸血の際に血液型を気にする必要がなく、血液型の違いによる拒絶反応が起こりにくいと考えられています。
代表的な例がゴリラです。
特にニシローランドゴリラはほぼすべてがB型とされています。
他の血液型を持つ個体がほとんど確認されておらず、血液型のバリエーションが極端に少ない動物の一つです。
また、ナマズもA型のみを持つことで知られています。
魚類の血液型に関する研究は限られていますが、特定の血液型に統一されている例として興味深いものです。
A型やO型が多い動物とは?
血液型は動物ごとに異なり、特定の型が多く見られる種も存在します。
A型やO型の割合が高い動物について調べると、哺乳類を中心に特定のパターンがあることがわかります。
猫の場合、日本国内ではA型が約95%を占めており、B型やAB型はごくわずかです。
猫種によっても血液型の割合が異なり、例えばアビシニアンやシャム猫ではB型の比率が比較的高い傾向があります。
豚の血液型ではA型が最も多く、全体の90%以上を占めるとされています。
このため、豚の胃粘膜はA型の研究材料として利用されることもあります。
人間に最も近い類人猿の血液型を調べると、チンパンジーはA型とO型が多く、ゴリラはB型のみと異なる特徴を持っています。
サルの仲間全体を見ても、A型やO型が多い傾向が見られます。
動物の血液型の分布には進化の過程が影響していると考えられています。
特定の血液型が多い動物では、病気への耐性や環境適応に関連する可能性も指摘されています。
今後の研究によって、血液型の進化的な役割がさらに明らかになることが期待されています。
動物の血液型と輸血・性格・雑学

- 犬や猫の血液型と輸血の注意点
- 血液型と性格に関連はある?
- 狐や豚の血液型はどうなっている?
- 血液型の自然抗体を持つ動物とは?
- 動物の血液型にまつわる雑学・豆知識
犬や猫の血液型と輸血の注意点
犬や猫の血液型は人間と異なり、種類や輸血時の適合性に独自のルールがあります。
特に輸血を行う際には、血液型の違いによる拒絶反応に注意が必要です。
犬の血液型と輸血のポイント
犬の血液型は「DEA(Dog Erythrocyte Antigen)式」と呼ばれ、現在の国際基準では8種類が確認されています。
中でも「DEA1.1」は輸血の際に重要な抗原であり、DEA1.1(+)とDEA1.1(-)に分かれます。
犬は生まれつき他の血液型に対する抗体を持っていないため、初回の輸血では異なる血液型でも比較的拒絶反応が起こりにくいとされています。
しかし、輸血後に抗体が作られるため、2回目以降の輸血では適合しない血液型を輸血すると急性溶血反応が発生するリスクがあります。
そのため、2回目以降の輸血では適合試験(クロスマッチテスト)が必要です。
猫の血液型と輸血の注意点
猫の血液型は「AB式」に分類され、A型・B型・AB型の3種類があります。
日本の猫の大半はA型ですが、一部の猫種ではB型やAB型が見られます。
猫は生まれつき他の血液型に対する自然抗体を持っているため、異なる血液型の血液を輸血すると強い拒絶反応を引き起こします。
特にB型の猫にA型の血液を輸血すると、急性溶血反応が発生し、命に関わる重篤な症状を引き起こす可能性が高いため、輸血時には血液型を特定し、慎重に適合性を確認する必要があります。
猫の輸血における抗体反応の詳細については、「血液型の自然抗体を持つ動物とは?」のセクションで詳しく解説しています。
犬や猫の輸血時の課題
犬や猫の輸血は、人間とは異なり、事前に血液バンクが整備されていないケースが多いため、供血犬・供血猫の確保が課題となります。
動物病院によっては、健康な犬や猫を供血ドナーとして登録する制度を設けている場合もあるため、飼い主がペットの血液型を事前に調べ、万が一に備えて情報を確認しておくことが推奨されます。
血液型と性格に関連はある?
血液型と性格の関連性については、人間においても科学的な根拠があるとは言い切れません。
動物に関しても同様で、血液型が直接性格を決定するものではなく、遺伝や環境要因の影響が大きいとされています。
動物の血液型研究は主に医療目的で行われており、性格との関連性を示す確固たるデータは存在しません。
しかし、一部の動物においては、特定の血液型を持つ個体に共通する傾向があるという意見もあります。
例えば、猫の場合、日本では約95%がA型とされ、B型の猫は少数派です。
一部の研究では、A型の猫は社交的で温厚な性格が多く、B型の猫は警戒心が強く独立心が旺盛な傾向があるとされています。
ただし、これは統計的なデータではなく、あくまで観察による傾向の一つです。
ゴリラはほぼ全てがB型ですが、B型だからといって特定の性格が生まれるわけではありません。
ゴリラの社会性や行動パターンは血液型ではなく、種としての生態や環境要因によって形成されるものです。
人間では血液型占いが人気ですが、動物に関しては科学的な裏付けが十分ではありません。
血液型による性格の違いを語ることは可能ですが、それが決定的な要因とは言えないため、動物の性格を判断する際は、血液型ではなく、育成環境や個体の習性を考慮することが重要です。
狐や豚の血液型はどうなっている?
動物の血液型は種によって大きく異なり、分類方法も統一されていません。
狐や豚の血液型については、研究が限られていますが、それぞれ特徴的な分類が存在します。
狐の血液型
狐の血液型に関する研究は少なく、詳細な分類は確立されていません。
野生動物の血液型は一般的に輸血の機会が少ないため、研究が進んでいない傾向があります。
犬に近い動物であることから、犬の血液型分類である「DEA式」と似た血液型を持つ可能性があると考えられています。
しかし、現時点では明確な分類は確認されていません。
野生動物の血液型は、医療分野よりも遺伝学や生態学の研究対象として扱われることが多く、狐の血液型に関する知見は今後の研究によって明らかになると考えられます。
豚の血液型
豚の血液型は比較的研究が進んでおり、主にA型が多いことが確認されています。
特に、研究材料として豚の血液が利用されることがあり、豚の胃粘膜がA型の研究材料として販売されるほど、A型が優勢な血液型とされています。
豚の血液型の分類は家畜動物の中でも重要視され、輸血の際の適合性が研究されています。
ただし、犬や猫と違い、一般的な家畜として飼育される豚において輸血の必要性が低いため、血液型の細かい分類は実生活で利用される機会が限られています。
狐の血液型は未解明な部分が多く、豚はA型が多いという特徴があるものの、詳細な分類が進んでいない動物の一例といえます。
血液型の自然抗体を持つ動物とは?
血液型の自然抗体を持つ動物とは?
血液型の違いが輸血時の拒絶反応を引き起こす要因となるのは、赤血球の抗原に対する免疫系の反応です。
動物によっては、あらかじめ他の血液型に対する抗体(自然抗体)を持つものと、持たないものがいます。
自然抗体を持つ動物は異なる血液型の血液を輸血すると即座に免疫反応を示すため、血液型の適合が厳格に求められます。
自然抗体を持つ動物:猫と牛は慎重な輸血が必要
猫は生まれつき他の血液型に対する抗体を持っています。
A型の猫はB型の血液に対する抗体を、B型の猫はA型の血液に対する強い抗体を持っており、異なる血液型を輸血すると急性溶血反応を引き起こします。
これは輸血後すぐに赤血球が破壊され、血尿や貧血、黄疸、ショックなどの症状を伴う危険な状態です。
特にB型の猫はA型の血液に対する抗体が強いため、B型の猫にA型の血液を輸血すると致命的な反応を起こす可能性が高く、慎重な適合試験が必須となります。
AB型の猫はA型の血液を受け入れることができますが、B型の血液には適応できない可能性があります。
猫の輸血では必ず血液型検査を行い、適合する血液を使用しなければなりません。
牛も自然抗体を持つ動物の一つです。
牛の血液型は9種類以上が確認されており、異なる血液型の血液を輸血すると強い免疫反応を示します。
このため、牛の輸血も猫と同様に厳格な血液型適合検査が必要とされます。
自然抗体を持たない動物:犬と馬は初回輸血が比較的安全
犬は生まれつき他の血液型に対する抗体を持たないため、初回の輸血では異なる血液型でも比較的拒絶反応が起こりにくい特徴があります。
しかし、一度異なる血液型の輸血を受けると、その血液型に対する抗体が作られ、2回目以降の輸血では強い拒絶反応を引き起こす可能性があります。
このため、犬の輸血では2回目以降は適合試験(クロスマッチテスト)を行うことが推奨されます。
馬も犬と同様に、自然抗体を持たない動物です。
そのため、血液型が完全に一致しなくても輸血が可能な場合があります。
しかし、馬の血液型は8種類の抗原の組み合わせによって決まり、3兆通り以上の血液型が存在するとされているため、完全に適合する血液を見つけることは非常に困難です。
そのため、輸血時には拒絶反応のリスクを減らすために「ユニバーサルドナー」と呼ばれる特定の馬の血液が使用されることが多く、特にハフリンガー種の馬が適しているとされています。
自然抗体の有無と輸血のリスク
自然抗体を持つ動物(猫・牛)は、異なる血液型の輸血に対して即座に免疫反応を起こし、生命に危険を及ぼすため、血液型の一致が絶対条件となります。
一方で、自然抗体を持たない動物(犬・馬)は初回の輸血時には拒絶反応のリスクが比較的低いため、適合試験なしでも輸血が行われることがあります。
しかし、2回目以降の輸血では抗体が作られてしまうため、クロスマッチテストを実施して適合性を確認することが重要です。
動物の血液型にまつわる雑学・豆知識
動物の血液型には興味深い特徴が多く存在します。
- ゴリラはB型しかいない?
ニシローランドゴリラはほぼすべてがB型であることが確認されています。他の動物と異なり、血液型のバリエーションがほとんどない珍しい例です。 - カメ、クジラ、ワニの血液型はB型のみ?
カメやクジラ、ワニの血液型もB型のみとされています。
動物の血液型はまだ未解明の部分が多く、今後の研究によって新たな発見があると考えられます。
それぞれの種がどのような血液型を持ち、どのように進化してきたのかを知ることは、動物医療の発展にもつながる重要な分野です。
動物の血液型の種類と特徴を知る
動物の血液型は、それぞれの種ごとに異なる特徴を持ち、輸血や医療の分野で重要な役割を果たしています。
犬や猫の輸血時の適合性、馬や牛の多様な血液型、ゴリラやナマズのように一種類の血液型しか持たない動物など、血液型にはさまざまな違いがあります。
こうした血液型の違いを理解することで、ペットの健康管理や動物医療の発展にもつながるでしょう。
今後の研究によって、さらに新しい発見がされることが期待されています。
- 動物の血液型は種ごとに異なり、分類方法も統一されていない
- 犬の血液型はDEA式で、8~13種類が確認されている
- 猫の血液型はAB式で、A型・B型・AB型の3種類のみ
- 馬の血液型は8種類の抗原の組み合わせにより3兆以上のパターンがある
- 牛の血液型は9種類以上存在し、輸血の適合が複雑
- ゴリラはB型しか持たない珍しい動物
- ナマズはA型のみを持つ数少ない魚類の例
- 動物の血液型によって輸血の適合性が大きく異なる
- 犬は初回の輸血なら異なる血液型でも拒絶反応が起こりにくい
- 猫は異なる血液型の血液を輸血すると強い拒絶反応を示す
- 自然抗体を持つ動物(猫・牛)は輸血時の血液型一致が必須
- 自然抗体を持たない動物(犬・馬)は初回の輸血は比較的安全
- A型やO型の血液型が多い動物には猫やチンパンジーが含まれる
- カメやクジラはB型のみを持つと考えられている
- 動物の血液型を知ることは、ペットの健康管理にも役立つ