キャットフードの「糖質」は、多くの商品でパッケージに直接表示されていません。そのため、保証成分から差し引いておおよその量を推定する方法が使われます。ただし、この計算で求められるのは砂糖の量ではなく、でんぷんなどを含む炭水化物の概算です。分析値そのものではないため、小数点以下の差だけで商品を順位付けするのには向きません。
糖質が少ないフードを探すときも、数値だけを最優先にしないことが大切です。猫が主食として必要な栄養を摂れるか、年齢や体型、持病に合うか、必要量を安定して食べられるかを先に確認します。
気になる動物・ペット情報を探す
犬・猫を中心に、食事、健康、しつけ、品種、暮らし、野生動物などの情報をテーマ別にまとめています。
ペット・動物ガイドを見る →
- キャットフードで使われる糖質・糖類・炭水化物の違い
- 保証成分から糖質を概算する計算式と具体例
- ドライとウェットを同じ条件で比べる方法
- 低糖質という言葉に頼らず主食を選ぶ判断基準
糖質の意味を整理する
日常会話では「糖質」と「糖類」が混同されますが、同じ意味ではありません。何を計算しているのかを理解すると、パッケージ表示を読み違えにくくなります。
炭水化物・糖質・糖類の違い
一般的な栄養上の関係は、炭水化物が糖質と食物繊維を含み、糖質の一部に糖類がある、というものです。糖類にはブドウ糖や果糖、砂糖などが含まれます。一方、糖質には糖類だけでなく、でんぷんなども含まれます。
キャットフードの原材料に砂糖が見当たらなくても、穀類、いも類、豆類、でんぷんなどに由来する炭水化物は含まれ得ます。「砂糖不使用」と「低糖質」は同じではありません。「グレインフリー」も穀類不使用を示すだけで、豆やいも、タピオカなどを使っていれば炭水化物は存在します。
この記事では、保証成分から差し引いて求める値を、一般に検索される言葉に合わせて「糖質の推定値」と呼びます。厳密には、可溶性炭水化物などをまとめて推定する可溶無窒素物(NFE)に近い値であり、糖類だけを測ったものではありません。
猫にも炭水化物は含まれる食事を与えられる
猫は肉食動物で、たんぱく質を重要な栄養源として使います。しかし、炭水化物を含むフードを一切食べられないという意味ではありません。加熱など適切な加工を受けたでんぷんは、キャットフードの形状を保つ目的やエネルギー源として使われます。
一方で、猫に必要な栄養は炭水化物の有無だけでは評価できません。必須アミノ酸であるタウリン、必要な脂肪酸、ビタミン、ミネラル、水分、総カロリーなど、食事全体の設計が重要です。糖質が0%に近いことを目標にするのではなく、愛猫に適する範囲でバランスを見る必要があります。
糖質の計算式
パッケージに炭水化物や糖質が書かれていない場合は、保証成分の表示値から概算できます。必要な項目が欠けている商品では正確に計算できないため、メーカーへの確認が必要です。
基本の差し引き計算
一般的な計算式は次のとおりです。
推定糖質(%)=100-粗たんぱく質-粗脂肪-粗繊維-粗灰分-水分
たとえば、次の保証成分が表示されたドライフードを考えます。
- 粗たんぱく質:38%
- 粗脂肪:16%
- 粗繊維:4%
- 粗灰分:9%
- 水分:10%
計算は、100-38-16-4-9-10=23となり、現物の状態での推定糖質は23%です。
ここで注意したいのは、保証成分の多くが「以上」または「以下」で表示される点です。たとえば粗たんぱく質38%以上なら、実際には38%より多い可能性があります。粗繊維4%以下、水分10%以下も実測値とは限りません。複数の上限値と下限値を引いているため、得られる23%は目安であり、商品の正確な分析結果ではありません。
粗灰分がない場合
日本のペットフードでは、粗灰分が表示されていない商品があります。灰分は、フードを燃焼させた後に残るミネラル分の目安です。これを引かずに計算すると、その分だけ推定糖質が高く出ます。
インターネット上ではドライなら数%、ウェットなら数%と仮定する計算も見られますが、推定を重ねるほど誤差が大きくなります。商品同士を真剣に比較する場合は、メーカーに標準分析値としての灰分と炭水化物を問い合わせる方が確実です。回答が「乾物当たり」「100kcal当たり」「代謝エネルギー比」のどれかも確認します。
原材料からは割合を計算できない
原材料欄は使用量が多い順に並ぶのが基本ですが、各原材料の配合率までは通常分かりません。米やじゃがいもが何番目にあるかだけで、完成品の糖質を数値化することはできません。生肉は水分を多く含むため、最初に記載されていても、乾燥後の栄養への寄与を順番だけで判断できない点にも注意が必要です。
「肉が第一原料だから低糖質」「豆が後ろにあるから少量」といった推測ではなく、完成品の分析値を使います。
自分で計算した値には「推定」とメモし、商品名、計算日、使用した表示値も一緒に残すと、リニューアル後の数値と混同しにくくなります。
水分を除いて比較する
ドライとウェットを袋や缶に書かれたままのパーセントで比べると、水分量の差によって大きな誤解が生じます。比較には、水分を除いた乾物換算が役立ちます。
乾物換算の手順
乾物とは、フード全体から水分を除いた部分です。まず乾物率を求め、推定糖質を乾物率で割ります。
乾物率(%)=100-水分(%)
乾物当たりの推定糖質(%)=現物の推定糖質÷乾物率×100
先ほどのドライフードは、水分10%なので乾物率90%です。現物の推定糖質23%を使うと、23÷90×100=約25.6%となります。
次に、以下のウェットフードを例にします。
- 粗たんぱく質:10%
- 粗脂肪:5%
- 粗繊維:1%
- 粗灰分:2.5%
- 水分:78%
現物の推定糖質は、100-10-5-1-2.5-78=3.5%です。乾物率は22%なので、3.5÷22×100=約15.9%です。
現物の表示だけを見ると23%と3.5%で非常に大きな差に見えますが、乾物当たりでは約25.6%と約15.9%です。差は残るものの、水分の影響を取り除いて初めて公平に比べられます。
100kcal当たりでも見る
愛猫が実際に摂る栄養を考えるときは、100kcal当たりの炭水化物量も参考になります。計算には、100g当たりの代謝エネルギーと推定糖質のグラム数が必要です。
推定糖質(g/100kcal)=100g中の推定糖質(g)÷100g当たりのカロリー×100
先ほどのドライフードが380kcal/100gなら、23÷380×100=約6.1g/100kcalです。ウェットフードが85kcal/100gなら、3.5÷85×100=約4.1g/100kcalです。
この単位なら、同じカロリーを食べたときの推定糖質を比べられます。ただし、元になる糖質が保証成分からの概算なら、結果も概算です。小数点以下のわずかな差を品質差として扱わないでください。
代謝エネルギー比は別の指標
獣医師向けの資料や療法食では、炭水化物が総代謝エネルギーの何%を占めるかという「%ME」で示されることがあります。これは重量比の乾物%とは異なります。25%乾物と25%MEは同じ意味ではありません。
メーカーから得た数値を比較するときは、単位を必ずそろえます。乾物当たりの数値と代謝エネルギー比を同じ表でそのまま比べないでください。糖尿病などで厳密な管理が必要なら、自己計算よりメーカー資料と獣医師の判断を優先します。
低糖質フードの見分け方
「低糖質」という統一された商品名だけで選ぶのではなく、表示を同じ順序で確認します。糖質の少なさは評価項目の一つであり、合格条件のすべてではありません。
主食の条件を最初に確認する
毎日の主食には、猫のライフステージに合う総合栄養食を選びます。一般食、副食、おかずタイプ、おやつは、糖質が少なく見えても、それだけで必要な栄養を満たす設計とは限りません。肉や魚だけを長期間主食にすると、カルシウム、ビタミン、タウリンなどの不足や偏りにつながる可能性があります。
次に、対象年齢、カロリー、給与量、たんぱく質、脂質、水分、ミネラルなどを見ます。療法食は特定の病気の栄養管理を目的とするため、低糖質に見えても健康な猫へ自己判断で使うものではありません。
数値が比較できる商品を選ぶ
糖質が少ない商品を比較したいなら、少なくとも粗たんぱく質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、水分、代謝エネルギーが分かるものを選びます。粗灰分や炭水化物が非表示の場合は、メーカーに次を問い合わせるとよいでしょう。
- 炭水化物の標準分析値
- 乾物当たりの炭水化物割合
- 100kcal当たりの炭水化物量
- 代謝エネルギーに占める炭水化物の割合
- 数値が保証値か平均的な分析値か
問い合わせへの回答が得られない場合は、精度の低い推定値で断定せず、「比較不能」と扱うのも適切な判断です。
ドライとウェットの傾向を理解する
ドライフードは粒の形を保つためにでんぷん質が使われることが多く、ウェットより糖質が高い傾向があります。ウェットフードは水分が多く、低糖質の商品を見つけやすい傾向があります。しかし、すべてのウェットが低糖質、すべてのドライが高糖質というわけではありません。
とろみのあるウェットにはでんぷんが使われることがあり、ドライにも炭水化物を抑えた設計があります。形状だけで決めず、乾物換算や100kcal当たりで確認します。また、猫が食べないウェットを選んでも主食として機能しません。嗜好性、保存のしやすさ、飼い主が正確に量れるかも含めます。
低糖質だけで決めない理由
糖質を下げると、その分のエネルギーは主にたんぱく質や脂質から供給されます。低糖質という一方向の変化が、すべての猫に適するとは限りません。
カロリーが低いとは限らない
脂質は重量当たりのエネルギーが高いため、低糖質フードが高脂質設計ならカロリー密度が高くなることがあります。糖質が少ないから多く与えてよいわけではありません。肥満猫では、1日の総カロリーが必要量を上回れば体重は増えます。
商品を替えるときは、以前と同じグラム数をそのまま与えず、100g当たりのカロリーから新しい給与量を計算します。おやつ、トッピング、投薬用の食品も総カロリーに含めます。
たんぱく質が多ければ万能ではない
猫にとってたんぱく質は重要ですが、腎臓病などで個別の栄養管理が必要な場合があります。高たんぱく・低糖質という特徴だけで、持病のある猫に適すると判断できません。リン、ナトリウム、脂質、水分、カロリーなど、病気に応じて優先する項目が変わります。
シニア猫も年齢だけで一律に制限するのではなく、腎機能、筋肉量、歯、消化状態を確認します。体重が同じでも、筋肉が落ちて脂肪が増えていることがあるため、体型と筋肉量の評価が必要です。
食べられることが最優先になる場面
理論上の糖質が低くても、猫が嫌って必要量を食べないなら安全な食事ではありません。特に肥満猫が急に食べなくなると、肝リピドーシスの危険があります。フードを変更するときは、一般に7~10日ほどかけて少しずつ混ぜ、食欲と便の状態を確認します。
食べるまでほかの食事を出さない方法は避けてください。明らかな食欲低下、嘔吐、元気消失、黄疸などがあれば、糖質計算を続けるより早く動物病院へ相談します。

健康状態で基準を変える
糖質の意味は、健康維持のために比較する場合と、病気を管理する場合で重みが違います。特定の病気がある猫では、インターネットの基準値を自己適用しないことが重要です。
健康な成猫
健康な成猫では、ライフステージに合う総合栄養食で、適正体重を維持でき、便や被毛、活動性に問題がないことを優先します。糖質が比較的少ないことは選択理由の一つになりますが、特定の割合を下回らなければ不健康というものではありません。
体重が増えている場合は、糖質だけでなく総カロリーと実際の給与量を見直します。キッチンスケールで量り、家族からの追加や置き餌、ほかの猫の食事を食べていないか確認します。
糖尿病の猫
糖尿病の猫では、低炭水化物・高たんぱくの食事が血糖管理に役立つ場合があります。2026年の米国動物病院協会の猫糖尿病管理ガイドラインも、個々の必要性を踏まえながら、炭水化物を抑えた食事を検討する考え方を示しています。
ただし、食事変更によって血糖や必要なインスリン量が変わる可能性があります。インスリンや経口薬を使用中の猫のフードを自己判断で急に替えると、低血糖や治療の不安定化につながるおそれがあります。一般食か療法食かも含め、栄養値を主治医に見せて変更時期とモニタリングを決めます。
腎臓病や消化器疾患がある猫
糖尿病と腎臓病、膵炎、腸疾患などが併存することもあります。その場合は、低糖質よりリン制限、脂質、消化性、食べられることなどが優先される可能性があります。複数の制限を自己流で重ねると、必要な栄養とカロリーを満たせなくなることがあります。
病気が疑われる猫には、計算上の「最低糖質商品」を探すより、診断に基づく栄養計画が必要です。主治医が必要に応じて獣医栄養学の専門家と連携します。

サプリメントは目的を整理して選びましょう
ペット用サプリメントには、関節や皮膚・被毛、腸内環境などさまざまな目的の商品があります。あくまで日々の健康管理を補助するものとして考え、体調に不安がある場合は獣医師へ相談しましょう。
商品を比較する実践手順
候補を同じ表にまとめると、異なる単位やマーケティング表現に惑わされにくくなります。計算値と確認できない項目を分けて記録しましょう。
- 主食としての適格性を確認する
猫用の総合栄養食か、対象年齢が合うかを見ます。療法食は獣医師の指示を前提にします。 - 保証成分を転記する
粗たんぱく質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、水分を、以上・以下も含めて記録します。 - 現物の推定糖質を計算する
100から5項目を引き、推定値であることを明記します。粗灰分が不明なら無理に断定しません。 - 乾物当たりへ換算する
水分を除いて、ドライとウェットを同じ土台で比較します。 - カロリーと1日量を確認する
100kcal当たりの推定糖質、実際の給与量、総摂取カロリーを見ます。 - 愛猫の条件で最終判断する
年齢、体型、筋肉量、食欲、便、持病に合うかを確認します。
比較表には、推定糖質だけでなく、カロリー、1日の給与量、たんぱく質、脂質、食べた量、便の変化を並べます。商品がリニューアルされたら、同じ名称でも再計算が必要です。通販サイトの古い画像より、手元のパッケージとメーカー公式の最新情報を優先してください。
愛猫に合ったキャットフードを選びましょう
猫の食事は、年齢や活動量、好みなどによって選び方が変わります。栄養バランスや食べやすさ、継続しやすい価格などを確認しながら、その猫に合うフードを検討しましょう。
キャットフードの糖質のよくある質問
- 粗灰分が書かれていない場合も計算できますか?
-
灰分を仮定すれば概算はできますが、誤差が増えます。灰分を引かない計算では糖質が高く出ます。正確に比較したい場合は、メーカーに粗灰分と炭水化物の標準分析値を問い合わせてください。
- グレインフリーなら糖質は少ないですか?
-
必ずしも少なくありません。穀類の代わりに、豆類、いも類、タピオカなどのでんぷん源を使うことがあります。グレインフリーという表示ではなく、完成品の栄養値から確認します。
- ウェットフードはすべて低糖質ですか?
-
低い傾向はありますが、商品によって異なります。とろみ付けなどにでんぷんを使う商品もあります。現物の割合だけでなく、乾物当たりや100kcal当たりに換算し、総合栄養食かも確認してください。
- 糖質は何%以下ならよいですか?
-
健康な猫すべてに共通する一つの基準はありません。乾物%、現物%、代謝エネルギー比のどれかでも数字の意味が変わります。健康状態、体重、食べられる量と食事全体の栄養バランスで判断します。
- 糖尿病の猫は最も低糖質の商品に替えてよいですか?
-
自己判断で急に替えないでください。食事変更で血糖と必要な薬の量が変わる可能性があります。候補商品の栄養情報を主治医へ示し、インスリンなどの治療とモニタリングを含めて切り替え計画を立てます。
計算値は、商品の表示が変わるたびに見直してください。
まとめ
キャットフードの糖質は、多くの場合、100から粗たんぱく質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、水分を引いて概算できます。ただし、保証値の上限・下限を使った推定であり、糖類だけを測った数字ではありません。粗灰分が非表示なら誤差が増えるため、メーカーの標準分析値を確認するのが確実です。
ドライとウェットを比べるときは、現物のパーセントをそのまま並べず、乾物当たり、必要に応じて100kcal当たりへ単位をそろえます。乾物%と代謝エネルギー比は別の指標なので混同しないでください。
低糖質はフード選びの一要素にすぎません。主食としては、対象年齢に合う総合栄養食で、必要なたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、カロリーを摂れ、猫が安定して食べられることを優先します。糖尿病や腎臓病などがある猫は、計算値だけで変更せず、獣医師と食事・薬・体重管理を一緒に調整しましょう。

