愛猫が急にカリカリを食べない状態になり、栄養バランスを考えた総合栄養食には見向きもしない。
匂いをクンクンするけど食べない姿にやきもきする一方で、おやつのチュールだけは喜んで食べる…。
猫がご飯食べないのにチュールは食べるというこの状況、単なるわがままだと思ってほっとくべきか、それとも何らかの体調不良のサインなのか、飼い主さんとしてはとても不安になりますよね。
もし、ご飯食べないで寝てばかりいる様子が見られたら、腎不全のような深刻な病気の可能性も頭をよぎります。
かと思えば、水は飲むから少し安心したり、でも万が一チュールも食べない事態になったらどうしようと、心配は尽きないものです。
そもそも、猫がご飯を食べない時、チュールを与えてもいいのでしょうか。
また、猫は何日間食べなくても大丈夫なのか、その見極めも非常に難しい問題です。
この記事では、そんな飼い主さんの尽きない悩みに寄り添い、愛猫がご飯を食べない様々な理由から、家庭でできる対処法、そして病気の危険なサインまでを詳しく解説していきます。
- 猫がご飯を食べずにチュールだけを食べる理由
- 病気の可能性がある危険なサインの見分け方
- 家庭でできる具体的な食事の工夫と対処法
- 動物病院を受診すべきタイミングと基準
猫がご飯食べないのにチュールは食べる5つの理由

- 急にカリカリを食べないのは味への飽きかも
- クンクンするけど食べない食器や環境の問題
- 総合栄養食を避けるのは本能的な判断かも
- 隠れた体調不良や口内炎のサイン
- ご飯食べないで寝てばかりは病気の可能性も
急にカリカリを食べないのは味への飽きかも

猫が突然いつものカリカリを食べなくなる場合、まず考えられるのは食事内容への「飽き」です。
猫はもともと気まぐれで、同じフードが続くと食べ飽きてしまうことがあります。
これは、単なるわがままというよりは、猫が持つ本能的な習性の一つと捉えることができます。
理由として、猫は味覚だけでなく、特に「香り」に敏感な動物であることが挙げられます。
例えば、開封してから時間が経ったドライフードは、風味が落ちて香りが弱くなってしまいます。
人間には分からないようなわずかな変化でも、猫にとっては食欲を左右する大きな要因になるのです。
具体的には、昨日まで食べていたフードの袋を新しく開けた途端に食べなくなった、というケースも少なくありません。
また、おやつのチュールは香りが強く嗜好性が非常に高いため、普段の食事の魅力が相対的に下がってしまい、カリカリを拒否することにつながる場合もあります。
このように、急にカリカリを食べなくなる背景には、フードの風味の変化や、より魅力的なおやつの存在が関係している可能性が考えられます。
クンクンするけど食べない食器や環境の問題

匂いを嗅ぎに来るものの、結局食べてくれないという行動は、食事そのものではなく、食事をする「環境」に原因がある可能性を示唆しています。
猫は非常にデリケートでキレイ好きな動物であり、安心して食事ができる環境が整っていないと、食べることをためらってしまうのです。
その理由の一つに、食器の問題があります。
猫のヒゲは非常に敏感なセンサーの役割を持っており、食事の際にヒゲが食器のフチに当たることを嫌がります。
深さのある小さな器や、軽くて食べているうちに動いてしまう食器は、猫にとってストレスの原因となります。
また、食器が汚れていたり、前に食べたフードの匂いが残っていたりすることも、食欲を減退させる要因です。
加えて、食事場所の環境も大切です。
例えば、トイレの近くや、テレビの音、人の行き来が激しい騒がしい場所では、猫は落ち着いて食事に集中できません。
多頭飼いの場合は、他の猫に邪魔されることを警戒して食べないこともあります。
このように、猫が安心して食事に集中できる、静かで清潔な環境と適切な食器を用意してあげることが、食欲を取り戻す鍵となる場合があります。
総合栄養食を避けるのは本能的な判断かも

猫が総合栄養食を避け、おやつばかりを好む背景には、猫が本来持っている栄養バランスを見分ける能力が関係している可能性があります。
猫はもともと狩りをして暮らしてきた動物であり、自分の体が必要とする栄養素を本能的に選ぶ習性があると考えられているのです。
そのため、現在与えられている総合栄養食が、その時の猫の体が求める栄養バランスと合っていない場合、食べるのをやめてしまうことがあります。
これは、特定の栄養素が不足している、あるいは過剰であると感じ取っているのかもしれません。
一方で、チュールのようなおやつは、栄養バランスよりも猫の嗜好性を最大限に高めるように作られています。
味が濃く、香りが強いため、猫の本能的な食欲を強く刺激します。
その結果、栄養バランスはさておき、目の前にある美味しいものを優先してしまうのです。
これは、栄養価の高い食事よりも、ついジャンクフードに手が伸びてしまう人間の心理と似ているかもしれません。
したがって、総合栄養食を避ける行動は、単なる好き嫌いだけでなく、猫なりの栄養選択の結果である可能性も視野に入れる必要があります。
隠れた体調不良や口内炎のサイン

ご飯を食べたそうにするものの、いざ食べ始めるとやめてしまう、あるいは口元を痛がるような仕草を見せる場合、体のどこかに不調が隠れている可能性を疑う必要があります。
特に、口の中に痛みや違和感があると、食欲があっても食べることができなくなります。
その代表的な原因が、口内炎や歯周病です。
これらは猫にとって非常に一般的な病気であり、強い痛みを伴います。
口の中に炎症があると、硬いカリカリが患部に触れた時に激痛が走るため、食事を避けるようになるのです。
よだれの量が増えたり、よだれに血が混じったり、口臭が強くなったりといった症状も、口内トラブルのサインです。
また、口の中以外にも、内臓疾患によって吐き気や腹痛を感じている場合も食欲不振につながります。
猫は不調を隠すのが得意な動物なので、飼い主が見て分かるほどの変化がある時は、症状がかなり進行していることも少なくありません。
チュールのようなペースト状のものは、痛みなく食べられるために口にすることがあります。
そのため、「チュールは食べるから大丈夫」と安易に判断せず、他に変わった様子がないか注意深く観察することが大切です。
ご飯食べないで寝てばかりは病気の可能性も

食欲不振に加えて、普段よりも明らかに活動量が落ち、「寝てばかりいる」という状態は、病気が潜んでいる可能性を強く示唆する危険なサインです。
猫はもともとよく寝る動物ですが、その寝方や場所、元気のなさには注意を払う必要があります。
体調が悪い猫は、体力を温存しようとして活動を控え、じっとうずくまっていることが多くなります。
いつもなら遊ぶおもちゃに興味を示さなかったり、飼い主さんが呼んでも反応が鈍かったりするでしょう。
特に、背中を丸めてお腹を守るような姿勢で寝ている場合は、腹部に痛みを感じているサインかもしれません。
また、普段は寝ないようなクローゼットの奥や家具の隙間など、暗くて狭い場所に隠れるようにしている時も注意が必要です。
消化器系の病気(胃腸炎、便秘、腸閉塞など)、泌尿器系の病気(下部尿路疾患など)、あるいはウイルス感染症など、食欲低下と元気消失を引き起こす病気は数多く存在します。
単なる夏バテや気まぐれとは明らかに様子が違うと感じた場合は、早めに動物病院を受診することを強く推奨します。
猫がご飯食べない、チュールは食べる時の対処法

- ご飯は食べず水は飲む場合のチェック点
- 腎不全など考えられる具体的な病気
- ほっとくのは危険!病院へ行くべき目安
- チュールも食べないのは緊急性が高いサイン
- ご飯を食べない時チュールを与えてもいい?
- 猫がご飯食べない、チュールは食べる時何日大丈夫?
ご飯は食べず水は飲む場合のチェック点

猫がご飯は拒否するものの、水は普段通り、あるいはそれ以上に飲んでいる場合、いくつかの可能性が考えられます。
水を飲むという行動自体は、脱水を防ぐ上で非常に重要ですが、それだけで安心できるわけではありません。
まず、水を飲む理由として、体内で炎症が起きていたり、発熱していたりする可能性が挙げられます。
体温が上がると、それを下げようとして飲水量が増えることがあります。
また、特定の病気のサインであるケースも少なくありません。
特に、多飲多尿(たくさん水を飲み、たくさんおしっこをする)は、慢性腎不全や糖尿病、甲状腺機能亢進症などの代表的な症状です。
これらの病気は、初期段階では食欲不振以外の症状が分かりにくいため、飲水量の変化は重要な手がかりとなります。
一方で、単純に口の中に痛みがあって固形物が食べられないだけで、流動体である水は問題なく飲めるという状況も考えられます。
この場合は口内炎や歯周病の可能性が高まります。
いずれにしても、「水は飲むから大丈夫」と自己判断せず、食欲不振が続くようであれば、飲水量の変化を獣医師に伝えられるように記録しておくと、診察の際に役立ちます。
腎不全など考えられる具体的な病気

猫がご飯を食べなくなる背景には、様々な病気が隠れている可能性があり、特に注意が必要なものの一つが「腎不全」です。
猫はもともと腎臓の機能が繊細で、年齢とともに慢性腎不全を発症しやすい動物として知られています。
腎不全が進行すると、体内に老廃物が溜まり、尿毒症を引き起こします。
これにより、吐き気や気分の悪さを感じるため、食欲が著しく低下するのです。
前述の通り、初期症状として水をたくさん飲むようになるといった変化が見られることもあります。
腎不全以外にも、食欲不振を引き起こす病気は多岐にわたります。
- 消化器系の病気
胃腸炎、便秘、異物の誤飲による腸閉塞、膵炎などが考えられます。嘔吐や下痢、腹痛などを伴うことが多いです。 - 泌尿器系の病気
膀胱炎や尿石症などの下部尿路疾患では、排尿時に痛みを感じたり、頻繁にトイレに行ったりする行動が見られ、全身の不調から食欲が落ちます。 - 感染症
猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎)では、鼻詰まりによって匂いが分からなくなり食欲が低下します。また、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)や猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)など、免疫力を低下させるウイルスも食欲不振の原因となります。
これらの病気は、食欲不振以外にも何らかのサインを出していることが多いです。
日頃から愛猫の様子をよく観察し、些細な変化にも気づけるようにしておくことが早期発見につながります。
腎不全に配慮したキャットフードについては、以下の記事も参考にしてみてください。
ほっとくのは危険!病院へ行くべき目安

猫の食欲不振に気づいた時、「どのくらい様子を見ていいのか」「いつ病院へ連れて行くべきか」という判断は非常に重要です。
単なる気まぐれであれば少し時間を置けば回復しますが、病気が原因の場合は放置することで状態が悪化してしまうため、見極めが肝心です。
病院を受診すべきか判断するための時間は、猫の年齢によって異なります。
若い猫ほど体力がなく、食事を摂らないことによるリスクが高くなります。
以下に一般的な目安を示しますが、これはあくまで健康な猫の場合であり、他の症状が見られる場合はこの限りではありません。
年齢・状態 | ご飯を食べない時間が続いたら受診を検討 |
---|---|
生後1~2ヵ月 | 8時間以上 |
生後2~3ヵ月 | 12時間以上 |
生後3~4ヵ月 | 16時間以上 |
1歳以上の成猫 | 24時間(1日)以上 |
肥満の猫 | 36時間以上(脂肪肝のリスク) |
特に肥満の猫が絶食状態に陥ると、「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる病気を発症する危険性が高まるため、より早い段階での対応が求められます。
食欲不振に加えて、嘔吐や下痢が続く、ぐったりして動かない、呼吸が苦しそうなど、他に明らかな異常が見られる場合は、上記の時間に関わらず、すぐに動物病院へ連絡してください。
チュールも食べないのは緊急性が高いサイン

普段は喜んで食べるチュールのような嗜好性の高いおやつさえも拒否する場合、それは猫の体調がかなり悪いことを示す、緊急性の高いサインである可能性が高いです。
猫は本能的に、多少体調が悪くても嗜好性の高い食べ物には反応を示すことが多いです。
その大好物すら口にしないということは、それを上回るほどの強い吐き気や痛み、倦怠感に襲われていると考えられます。
例えば、重度の口内炎で口を開けることすら辛い、消化器系の病気で激しい吐き気がある、あるいは全身状態が著しく悪化しているといった状況が想定されます。
このような状態では、脱水症状も急速に進行しやすくなります。
目がくぼんでいる、皮膚の弾力がなくなっているなどの脱水症状が見られたら、事態は深刻です。
「チュールは食べるからまだ大丈夫」が一つの判断基準になる一方で、「チュールも食べない」は、その逆の危険信号と捉えるべきです。
食欲が全くなく、水も飲まない状態が12時間以上続くようであれば、様子見はせずに、速やかに動物病院を受診してください。
夜間であっても、救急対応している病院を探すことを検討すべき状況と言えます。
また、病院で治療を受けた後の回復期の食事管理も大切です。
腎臓の健康に配慮したフードとして、ニュートロのデイリーディッシュは、シニア猫や食欲が落ちている猫でも食べやすく、水分補給にもつながるためおすすめです。

ご飯を食べない時チュールを与えてもいい?

愛猫がご飯を食べない時、心配のあまり「せめてチュールだけでも」と与えたくなるのが親心だと思います。
この行動自体は、一概に良いとも悪いとも言えません。
状況に応じた判断が求められます。
与えても良いケースとそのメリット
病気の回復期や食欲が落ちている時に、少量与えることで食欲を刺激するきっかけになることがあります。
また、薬を飲ませる際に混ぜて与えるなど、投薬の補助としても役立ちます。
水分補給の補助になる点もメリットと言えるでしょう。
与える際の注意点とデメリット
一方で、デメリットも存在します。
チュールはあくまで「おやつ」であり、総合栄養食ではありません。
チュールばかり与えていると栄養が偏り、本来食べるべき主食をますます食べなくなる可能性があります。
おやつの濃い味に慣れてしまうと、フードへの好みが偏ってしまう原因にもなりかねません。
したがって、もし与えるのであれば、食欲を刺激するための「きっかけ」として、ごく少量にとどめるのが賢明です。
フードに少しだけトッピングして香りをつけ、フード自体を食べてもらうように促すのが理想的な使い方です。
チュールを与えても主食を全く食べない状態が続く場合は、根本的な原因を探る必要があるため、動物病院に相談することをおすすめします。
猫がご飯食べない、チュールは食べる時何日大丈夫?

この記事の要点をまとめます。
- 猫がご飯を食べない原因は単なる飽きやわがままの場合がある
- フードの風味が落ちると香りに敏感な猫は食べなくなる
- 食器が汚れていたりヒゲが当たったりする環境も食事を拒否する理由になる
- おやつのチュールは嗜好性が高くご飯を食べなくなる一因になり得る
- 口内炎や歯周病など口の中の痛みで食べられないことがある
- ご飯を食べずに寝てばかりいるのは病気の危険なサイン
- 水をたくさん飲む場合は腎不全や糖尿病の可能性も考慮する
- 成猫であれば24時間以上食べない場合は病院受診が目安
- 子猫は体力がなく8時間~16時間で受診を検討すべき
- 肥満の猫は絶食が続くと脂肪肝のリスクが高まるため注意が必要
- 大好物のチュールさえも食べない時は緊急性が非常に高い
- 嘔吐や下痢、ぐったりしているなど他の症状があればすぐに病院へ
- ご飯を食べない時にチュールを与えるのは水分補給や食欲刺激のきっかけになる
- ただしチュールは総合栄養食ではないため与えすぎると栄養が偏る
- 食事の工夫で食欲が戻ることもあるためフードの温めや変更を試す価値はある