猫のしつけというと、「言うことを聞かせる」「悪いことをしたら叱る」といった方法を思い浮かべるかもしれません。しかし、猫は犬と同じような服従を目的としたトレーニングをする動物ではなく、猫の行動特性に合わせた教え方が必要です。
猫にも学習する力はあります。してほしい行動をした直後に褒めたり、ご褒美を使ったりすると、その行動を繰り返しやすくなります。一方、大声で怒鳴る、叩く、追いかけるといった方法では、何が正解なのかを教えるよりも、飼い主への警戒や恐怖につながる可能性があります。
また、「しつけの問題」に見える行動の中には、トイレ環境への不満、運動不足、恐怖、ストレス、痛みや体調変化などが関係している場合もあります。行動だけを止めようとせず、なぜその行動が起きているのかを考えることが猫のしつけでは大切です。
この記事では、猫のしつけの基本的な考え方から、トイレ、爪とぎ、噛み癖、鳴き声、ケージなど日常生活で迷いやすいテーマまで全体像を整理します。詳しい対処が必要なテーマについては、それぞれの詳細記事へ進めるよう案内します。
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- 猫にしつけができるのかと基本的な考え方
- ご褒美を使って行動を教える基本
- トイレや爪とぎなど生活習慣を整える方法
- 困った行動や専門家への相談を考える目安
猫もしつけで行動を学べる
猫のしつけを考えるうえでは、まず「猫にも学習はできるが、犬と同じ方法が適しているとは限らない」という点を理解しておくことが重要です。
猫は、自分にとって良い結果につながった行動を繰り返しやすくなります。例えば、決めた爪とぎを使った直後に褒められたり、呼ばれて近づいたときに好みのご褒美がもらえたりすると、その行動を覚えていくことがあります。
反対に、飼い主が望まない行動をしたときだけ大きな声を出しても、「何をすれば正解だったのか」が猫に伝わるとは限りません。
猫を人間の指示どおりに動かすことよりも、猫が自然に望ましい行動を選びやすい環境を作り、その行動を増やしていくことが基本です。
「猫はしつけできない」と感じている場合は、まず猫の学習方法と、人が期待しやすい「しつけ」との違いを整理してみましょう。
具体的に何から始めるのか、ご褒美の使い方や教えるタイミングまで確認したい場合は、基本手順をまとめた記事から進むと理解しやすくなります。
猫のしつけの仕方を解説|いつから始める?ご褒美を使った教え方の基本
猫のしつけでは、失敗した瞬間を探すより、してほしい行動ができた瞬間を見つけて褒めるほうが、猫に「何をすればよいのか」を伝えやすくなります。
しつけの基本は環境とご褒美
猫に新しい習慣を教えるときは、叱ることよりも、行動が起きる環境を整えることと、できた行動を強化することを中心に考えます。
してほしい行動を具体的に決める
「イタズラをしない猫にしたい」のような漠然とした目標では、飼い主側も対応が一定になりにくくなります。
例えば、次のように具体的な行動へ置き換えます。
- ソファではなく爪とぎ器を使ってほしい
- 人の手ではなくおもちゃで遊んでほしい
- 食卓ではなくキャットタワーに上がってほしい
- キャリーやケージへ自分から入ってほしい
このように「してはいけないこと」だけではなく、代わりに何をしてほしいのかまで決めておくことがポイントです。
成功した直後に褒める
ご褒美を使う場合は、望ましい行動とご褒美の関係が分かりやすいよう、成功した直後に与えます。
ご褒美は必ずしも食べ物だけではありません。猫によっては、遊び、優しい声かけ、好きな場所へ行けることなどが報酬になる場合もあります。
ただし、おやつを使う場合は普段の食事量とのバランスにも注意します。しつけのためだからといって大量に与える必要はありません。
練習は短時間で終える
猫が集中できる時間には個体差があります。嫌がっているのに繰り返すと、練習そのものを避けるようになる場合があります。
一度に多くを教えようとせず、成功しやすい小さな段階へ分け、猫が落ち着いている間に終えることが大切です。
家族で対応をそろえる
ある人はテーブルに乗ることを許し、別の人は毎回降ろすという状態では、猫にとってルールが分かりにくくなります。
猫に守らせたい生活上のルールがある場合は、家族の間でもできるだけ対応を統一します。
年齢に合わせて無理なく教える
猫のしつけを始められる年齢に、一律の期限があるわけではありません。子猫だけでなく成猫でも、新しい習慣を学ぶことは可能です。
ただし、年齢によって生活経験、体力、集中しやすさ、すでに身についている習慣などが違うため、同じ方法をそのまま当てはめるのではなく調整します。
子猫は生活習慣から覚える
子猫期には、トイレ、爪とぎ、人の手を噛まずに遊ぶこと、キャリーへの慣れなど、今後の生活に必要な習慣を少しずつ経験させていきます。
厳しい訓練を行う必要はありません。安全な環境を用意し、成功しやすい状態を作りながら、良い行動を繰り返せるようにします。
子猫のしつけ方|生後2・3・4・5・6か月で教えたいことと注意点
成猫や高齢猫にも学習は可能
すでに何年も続いている行動は変化するまで時間がかかることがありますが、「大人だからもうしつけられない」と決めつける必要はありません。
高齢の猫では、視力や聴力、関節、認知機能など身体的な変化も考慮します。これまでできていた行動が突然できなくなった場合には、単なるしつけの問題として扱わないことも重要です。
大人の猫もしつけできる?成猫・老猫の教え方と年齢別のポイント
暮らしの習慣を整える
猫との生活では、トイレ、爪とぎ、ケージなど毎日繰り返す行動について困るケースが多くあります。これらは、猫に命令して覚えさせるより、使いやすい環境を整えることが基本です。
トイレは使いやすい環境が重要
猫のトイレは、「ここで排泄しなさい」と叱って教えるものではありません。猫が落ち着いて利用できる場所、好みに合う猫砂、清潔さなどが大きく関係します。
子猫や迎えたばかりの猫へ基本的なトイレ習慣を教える場合と、一度使えていた猫が突然粗相を始めた場合では、確認すべき原因も異なります。
基本的なトイレの教え方と、粗相やマーキングが起きている場合の原因は分けて確認してください。
爪とぎは禁止するより場所を用意する
爪とぎは猫にとって自然な行動です。そのため、爪とぎ自体を完全にやめさせようとするより、猫が使いたくなる爪とぎ場所を用意します。
素材、形、向き、高さ、設置場所などにも好みがあります。ソファや壁など困る場所を保護すると同時に、その近くへ使いやすい爪とぎを置くといった環境調整が基本です。
猫の爪とぎのしつけ方|ソファで研がせないための環境づくりと対策
ケージは安心できる場所にする
通院、来客、災害時などを考えると、猫がケージやキャリーへ落ち着いて入れることは役立ちます。
ただし、ケージを問題行動への罰として使うと、「入れられると嫌なことが起こる場所」と覚えてしまう可能性があります。寝床や食事などと組み合わせ、安心できる場所として少しずつ慣らします。
猫をケージに入れるしつけ方|嫌がらないハウストレーニングのコツ
水は飲ませるより飲みやすくする
「猫に水を飲むしつけをしたい」と考える場合もありますが、強制的に飲ませるというより、自分から飲みやすい環境を作ることが中心です。
水飲み場を複数用意する、器や置き場所を変えるなど、猫の好みに合わせて工夫します。飲水量が突然大幅に増えた、反対にほとんど飲まなくなったと感じる場合には、体調にも注意が必要です。
猫に水を飲んでもらうには?水飲みの習慣づくりと飲水量を増やす工夫
誤食は環境管理を優先する
床に落ちた食べ物や異物を口にする猫では、「食べるな」と教えることだけに頼るのは安全とはいえません。
ひも、ビニール、小さな物、人用の食べ物など、誤食すると危険な物を猫が触れられる場所へ置かないことが優先されます。
散歩はすべての猫に必要ではない
猫の散歩は犬の散歩とは考え方が異なり、すべての猫に必要な習慣ではありません。室内で十分に運動や刺激を確保できる猫もいます。
屋外へ出す場合には、ハーネスへの慣らし方だけでなく、脱走、交通事故、感染症など屋外特有のリスクも考える必要があります。
猫の散歩はしつけできる?ハーネスに慣らす方法と安全上の注意点
困る行動は原因から考える
噛む、鳴く、物を落とす、威嚇するといった行動をすべて「悪い行動」と考えてしまうと、対応を誤ることがあります。
猫の行動には、遊び、狩猟欲求、恐怖、興奮、不快感、退屈、縄張り意識などさまざまな背景があります。
噛む・引っかく
猫が人の手を噛む場合、遊びの延長なのか、触られたくないのか、興奮しているのかなどによって対処が変わります。
手をおもちゃの代わりにして遊んでいると、人の手を噛んでもよい対象として覚えることがあります。突然攻撃性が強くなった場合には、痛みなど健康上の原因も考えます。
叱る・怒る
大声で怒鳴る、叩く、追い詰めるといった対応は、猫に正しい行動を理解させる方法にはなりにくく、恐怖や警戒につながる可能性があります。
問題行動が起こりにくい環境へ変更し、代わりにしてほしい行動を教えることを中心にします。
猫のしつけで正しい怒り方はある?叱るより効果的な伝え方とNG行動
入ってほしくない場所へ行く
キッチン、食卓、机など猫に入ってほしくない場所では、言葉で禁止するだけでは十分とは限りません。
食べ物や興味を引く物を片付け、物理的に侵入しにくくするとともに、キャットタワーなど代わりに登れる場所を用意する方法があります。
猫に行ってはいけない場所を教えるには?キッチン・テーブルへの侵入対策
物を落とす・暴れる
物を落とす、部屋を走り回るといった行動は、人にはイタズラに見えても、猫にとっては探索や遊び、狩猟行動の一部であることがあります。
遊びや運動が不足していないかを確認し、壊れたり誤食したりすると危険な物は事前に片付けます。
猫のイタズラはしつけで直せる?物を落とす・暴れる行動の原因と対策
威嚇や唸り
「シャー」という威嚇や唸りは、不安や恐怖、不快感などを伝えるサインです。これを罰で抑え込むと、猫が距離を取りたいという意思表示までできなくなるおそれがあります。
猫との距離を確保し、何が刺激になっているかを確認します。
要求鳴きや夜鳴き
鳴き声が増える原因には、要求、空腹、退屈、不安などがあります。発情や加齢、体調変化が関係する場合もあります。
単純に無視すればよいとは限らないため、いつ、どのような状況で鳴くのかを確認してから対応します。
猫の鳴き声がうるさいときのしつけ方|要求鳴き・夜鳴きの原因別対策
マウンティング
猫のマウンティングは性的な理由だけとは限らず、興奮やストレスなどが関係することもあります。
無理に押さえつけたり叱ったりするのではなく、起こる状況や頻度を確認し、必要に応じて生活環境を調整します。
多頭飼いでは猫同士を叱らない
猫同士の喧嘩や、先住猫と新しい猫の関係を「しつけ」で解決したいと考えることもあります。しかし、飼い主が叱って猫同士を仲良くさせることはできません。
それぞれが使える食器、トイレ、寝床、隠れ場所、高い場所などを確保し、一方の猫が資源を独占しにくい環境にします。
新しい猫を迎えた直後などは、最初から自由に接触させず、お互いの様子を見ながら段階的に慣らすことも重要です。
負傷するほど激しく争う、片方の猫が食事やトイレへ行けないなど生活に影響が出ている場合には、無理に同じ空間で過ごさせず、専門家への相談も検討してください。
しつけ用品は補助として使う
猫向けには、クリッカー、両面テープ、侵入防止用品、スプレーなど、さまざまなしつけ用品があります。
ただし、「この道具を使えば何でも直る」と考えず、何のために使用するのかを明確にすることが大切です。
特に、猫を驚かせたり怖がらせたりすること自体を目的とした方法ではなく、環境を整えたり、望ましい行動を教えたりするための補助として使います。
猫のしつけ用品それぞれの使い方や注意点を確認したい場合は、次の記事で整理しています。
猫のしつけ用品には何がある?スプレー・音・両面テープなどの選び方と注意点
猫は、ご褒美を使ったトレーニングによって「お手」「待て」「呼んだら来る」などの行動を覚えることもあります。生活上必須ではありませんが、猫が楽しめる範囲で行えば、コミュニケーションや刺激の一つになります。
専門家へ相談したほうがよい場合
すべての行動を飼い主だけで解決する必要はありません。原因が分からない場合や、対応しても改善しない場合、猫や人の安全に関わる場合には専門家への相談を検討します。
猫の行動について相談できる相手には、猫への対応経験があるトレーナー、訪問型の相談サービス、獣医師などがあります。
特に次のような場合は、しつけだけではなく健康面も考える必要があります。
- 突然性格や行動が変わった
- 急に噛む、怒る、触られることを嫌がるようになった
- トイレの回数や排尿の様子が変わった
- 飲水量や食欲が急に変化した
- 高齢になってから夜鳴きや落ち着かない行動が増えた
- 自分やほかの猫を傷つけるほど行動が激しい
痛みや病気が疑われる場合は、トレーニングを始める前に動物病院へ相談することを優先します。
専門家の種類や相談先の選び方については、次の記事で詳しく確認できます。
猫のしつけ教室・専門家への相談方法|トレーナーや動物病院の選び方
相談先を選ぶときは、「猫を言うことを聞かせる方法」だけを見るのではなく、行動の原因や生活環境、健康状態まで考慮してくれるかを確認するとよいでしょう。
地域から相談先を探す
猫のしつけや問題行動について専門家へ相談したい場合、利用できるサービスは地域によって異なります。
猫は環境の変化を負担に感じることもあるため、通所型だけでなく、自宅へ訪問するサービスやオンライン相談が適しているケースもあります。
料金だけで判断せず、猫への対応経験、相談できる行動の範囲、指導方針、訪問可能地域、事前説明などを確認してください。
地域別に相談先を探したい場合は、該当する記事へ進んでください。
地域にかかわらず、急な行動変化や排泄異常、痛みを疑う様子などがある場合には、しつけサービスより先に動物病院への相談を検討してください。
猫のしつけで大切な考え方
猫のしつけでは、「やめさせる方法」だけを探すのではなく、行動が起こる理由と環境を確認することが重要です。
基本的には、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 行動が起こる状況を確認する
いつ、どこで、誰に対して、何の前後に起こるのかを見ます。 - 健康上の問題が考えられないか確認する
急な変化、痛み、排泄や飲食の変化などがあれば健康面を優先します。 - 行動が起きにくい環境を作る
危険物を片付ける、必要な設備を増やすなど、人側で予防できることを行います。 - 代わりにしてほしい行動を決める
「テーブルへ乗らない」だけではなく、「キャットタワーへ上がる」など具体的にします。 - 望ましい行動を褒める
成功した直後に猫が喜ぶ結果を用意し、その行動を増やします。
猫によって性格、年齢、生活環境、好きな物は異なります。同じ方法を使っても反応が違うことは珍しくありません。
一度で覚えないことを「わざと反抗している」と考えず、猫にとって分かりやすい環境や伝え方になっているかを見直すことが大切です。
猫のしつけのよくある質問
- 猫は本当にしつけできますか?
-
猫にも学習する能力があるため、トイレ、爪とぎ、ケージへの移動、呼び戻しなどさまざまな行動を覚えることができます。
ただし、犬と同じような服従訓練を期待すると「しつけができない」と感じることがあります。猫が望ましい行動を選びやすい環境を作り、成功した行動を褒めて増やしていく方法が基本です。
- 猫が悪いことをしたら叱ったほうがよいですか?
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大声で怒鳴る、叩く、追いかけるなどの罰は避けたほうがよいでしょう。猫がその行動と罰の関係を正しく理解するとは限らず、飼い主への恐怖につながる可能性があります。
困る行動が起きにくい環境を整え、代わりにしてほしい行動を教えて褒める方法を中心に考えます。
- 猫のしつけは何歳までできますか?
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一律に「何歳まで」という期限はありません。子猫だけでなく成猫でも新しい行動を学ぶことはできます。
ただし、長く続いた習慣を変えるには時間が必要な場合があります。高齢猫では身体機能や体調の変化にも配慮し、無理なく進めることが大切です。
- おやつを使わないとしつけできませんか?
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必ずしもおやつだけがご褒美ではありません。猫によっては、おもちゃで遊ぶこと、撫でてもらうこと、好きな場所へ行けることなども報酬になります。
食べ物を使う場合も、与えすぎにならないよう普段の食事とのバランスを考えます。
- しつけても行動が直らないときはどうすればよいですか?
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まず、その行動が起きる原因をもう一度確認します。環境が猫に合っていない場合や、恐怖、退屈、ストレスなどが関係していることもあります。
突然始まった行動、排泄や食欲などの変化を伴う行動、強い攻撃性などでは健康問題も考えられるため、動物病院への相談を検討してください。健康面に問題がなく対応方法が分からない場合は、猫の行動に詳しい専門家へ相談する方法もあります。
猫のしつけは原因と環境から考えよう
猫のしつけでは、猫を人の命令に従わせることよりも、猫が望ましい行動を自然に選べる環境を整え、その行動を褒めて増やしていくことが基本です。
トイレ、爪とぎ、ケージなどの日常習慣も、噛む、鳴く、威嚇するといった困りごとも、まず行動の背景を確認します。
してほしくない行動を叱るだけではなく、「なぜ起きているのか」「代わりにどの行動をしてほしいのか」を考えることで、対応方法を整理しやすくなります。
また、急な行動変化や排泄、飲水、食欲などの変化がある場合は、しつけの問題と決めつけないことも重要です。健康上の原因が疑われる場合には、動物病院への相談を優先してください。
猫の年齢や性格、生活環境によって必要な対応は異なります。この記事で全体像を確認したうえで、現在困っているテーマに合う詳細記事から具体的な方法を確認してみてください。

