犬が食卓を見つめていると、肉や魚、ヨーグルト、パンを少し分けてもよいのか迷うことがあります。人が食べる食材の中にも犬が食べられるものはありますが、「人に安全」だから「犬にも安全」とは限りません。同じ食材でも、味付け、調理法、骨や種、脂肪、量によって危険性が変わります。
健康な成犬へ補助的に与えるなら、食材そのものが犬に安全かを確認し、味付けせず、適切に加熱し、喉に詰まらない小ささにします。主食は犬の年齢と状態に合う総合栄養食を基本とし、人の食べ物はおやつやトッピングの範囲にとどめましょう。子犬や持病のある犬、療法食を食べている犬では、少量でも適さない場合があります。
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- 犬が食べられる肉・魚・乳製品・穀類・野菜・果物
- 加熱、骨、味付け、量に関する安全な与え方
- チョコレートやブドウなど与えてはいけない食品
- 子犬や持病のある犬で事前相談が必要な理由
主食は総合栄養食が基本
人用の食材を与える前に、それが主食ではなく補助であることを明確にします。食べられる食材を組み合わせただけでは、犬に必要な栄養バランスが整うとは限りません。
総合栄養食は、対象となるライフステージの犬が、そのフードと水を基本に必要な栄養を摂れるよう設計されています。肉だけ、魚だけ、ご飯と野菜だけの食事では、カルシウム、リン、ビタミン、微量ミネラル、必須脂肪酸などが過不足になる可能性があります。
人の食べ物やおやつは、一日の摂取カロリーの10%以内を一つの上限目安とし、残りの90%以上を栄養バランスの整った主食から摂る考え方が一般的です。VCA Animal Hospitalsの犬のおやつに関する解説でも、主食を90%、おやつや間食を10%までとする目安が示されています。
ただし、10%は「そこまで必ず与えてよい量」ではありません。小型犬では一口が大きな割合になり、肥満、膵炎、食物アレルギー、腎臓病などがある犬では、さらに制限が必要です。
家族全員が与えた物を一枚のメモに記録すると、「少しずつ」の合計が増えすぎるのを防げます。
犬が食べられる肉
肉は犬にとってたんぱく質の供給源になりますが、部位、脂肪、加熱、骨に注意します。味付きの人用料理をそのまま分けるのではなく、犬用に別調理します。
鶏肉
鶏むね肉やささみは、皮と目立つ脂肪を除き、中心まで十分に加熱し、骨を完全に取り除けば、少量を与えられます。ゆでる、蒸すなど、油を加えない調理法が向きます。
焼き鳥、唐揚げ、ローストチキンには塩、たれ、香辛料、ネギ類、脂肪が使われることがあります。骨付き肉は、加熱した骨が割れて口や消化管を傷つける危険もあるため与えません。
牛肉
脂肪の少ない部位を、味付けせず十分に加熱して少量与えます。ステーキの脂身、焼肉のたれ付き肉、ハンバーグは、脂肪や塩分が多く、玉ねぎを含む可能性があります。
生肉や加熱不十分な肉には細菌や寄生虫の危険があります。犬だけでなく、調理する家族や便を片づける人への感染リスクも考え、十分に加熱してください。
豚肉
豚肉も、脂身を除いて中心まで加熱し、味付けしなければ少量使えます。ベーコン、ハム、ソーセージ、チャーシューは塩分と脂肪が多く、香辛料や玉ねぎ・にんにくを含む場合があるため避けます。
とんかつや角煮のように油や調味料を多く使う料理も犬向きではありません。豚骨を含め、骨は与えないでください。
レバーなどの内臓
レバーは栄養が豊富ですが、ビタミンAや銅などを多く含み、毎日大量に与えると過剰の問題が起こり得ます。総合栄養食へ自己判断で継続的に追加せず、与えるならごく少量にします。
手作り食で内臓を含める場合は、獣医栄養学に詳しい獣医師が作成したレシピを使用してください。
犬が食べられる魚
魚もたんぱく質や脂肪酸の供給源になります。種類だけでなく、骨、加熱、塩分、脂質を確認します。
サーモン・白身魚
サーモン、タラ、カレイなどは、味付けせず十分に加熱し、骨を丁寧に除いて少量与えられます。生魚や刺身は細菌や寄生虫の危険があり、魚種や与え方によって栄養上の問題もあるため、家庭では加熱が安全です。
ムニエル、フライ、煮付けは、バター、油、塩、しょうゆなどを含むため、そのまま与えません。
イワシ・サバ・アジ
青魚にはDHAやEPAが含まれますが、脂質も多くなりやすい食材です。加熱し、頭や骨を取り除き、少量にします。塩サバ、干物、しめサバ、味噌煮は塩分や調味料の点で避けてください。
膵炎歴、肥満、高脂血症、脂質制限がある犬では、健康によいイメージだけで青魚を加えず、獣医師へ相談します。
缶詰の魚
人用のツナ缶やサバ缶には油、塩水、調味料が使われることがあります。食塩不使用の水煮でも、主食として栄養が完結するわけではありません。常用するオメガ3源としてではなく、成分が管理された犬用フードを優先します。
缶を開けた後は別容器で冷蔵し、製品の保存表示に従います。缶の切り口を犬になめさせないでください。
ヨーグルトと乳製品
プレーンヨーグルトを食べられる犬もいますが、乳糖や乳たんぱく、脂肪への反応には個体差があります。
ヨーグルト
無糖、無香料、キシリトール不使用のプレーンヨーグルトを、ごく少量から試します。犬は乳糖を十分に分解できず、下痢、軟便、ガス、腹鳴が出ることがあります。症状が出たら中止してください。
「無糖」と表示されていても、人工甘味料が入っていないとは限りません。原材料欄を読み、キシリトールがあれば絶対に与えません。フルーツ味、チョコレート味、デザートタイプは糖分や犬に有害な材料を含む可能性があります。
ヨーグルトに含まれる菌を期待して大量に与えるのではなく、胃腸の問題がある犬は獣医師に相談します。犬用のプロバイオティクスが必要かは、症状と目的で判断されます。
牛乳
牛乳で下痢をする犬は少なくありません。乳糖だけでなく、脂肪とカロリーも加わります。水分補給は新鮮な水を基本とし、牛乳を水代わりにしないでください。
犬用ミルクもおやつや補助食品であり、成犬の主食ではありません。子犬へ人用牛乳を与えると、必要な栄養組成が合わず、下痢の原因にもなります。
チーズ
チーズは塩分と脂肪が多い製品があります。薬を包むために使う場合でも少量にし、毎日の習慣にする前に薬との飲み合わせや持病を獣医師へ確認します。
ブルーチーズなど特別な種類、香辛料やにんにく入りのチーズは避けます。乳製品で皮膚症状や消化器症状が出た犬には与えません。
パンやご飯などの穀類
穀類そのものを犬が食べられないわけではありませんが、人用の加工品には塩、糖、脂肪、危険な具材が加わることがあります。
白いご飯
味付けしていない炊いた白米は、健康な犬が少量食べることはできます。ただし、白米だけでは犬の栄養を満たせません。毎日の主食へ大量に加えると、総合栄養食の摂取が減り、カロリー過剰にもなります。
胃腸の不調時に鶏肉と白米を与える方法が紹介されることがありますが、原因によって適否が異なり、長期用の完全な食事ではありません。嘔吐や下痢がある犬には、まず動物病院へ相談してください。
食パン
プレーンな食パンを小さくちぎり、ごく少量与えても多くの健康な犬では問題になりにくいものの、栄養上必要な食べ物ではありません。塩分、糖分、バター、カロリーが加わりやすく、小型犬では一口でも多くなります。
レーズンパン、チョコパン、玉ねぎ入りパン、にんにくパン、キシリトールを含む低糖質パンは危険です。ナッツ、クリーム、ジャム、惣菜入りのパンも与えません。
生のパン生地
発酵前のイースト入り生地は与えてはいけません。胃の中で膨らみ、ガスがたまる危険があるほか、発酵によってアルコールが生じ、中毒につながる可能性があります。食べた場合はすぐ動物病院へ連絡してください。
オートミール
水でやわらかく煮た無糖・無塩のオートミールを少量与えられる犬もいます。牛乳、砂糖、はちみつ、チョコレート、レーズン、甘味料を加えません。
食物繊維を増やす目的で大量に与えると、下痢やガス、食事バランスの乱れにつながります。便秘や下痢の治療として自己判断で使わないでください。
野菜と果物
野菜や果物は少量のおやつに使えますが、種、芯、皮、硬さ、糖分に注意します。
与えやすい野菜
にんじん、いんげん、かぼちゃ、ブロッコリー、きゅうりなどは、味付けせず、犬が飲み込める小ささにして少量与えられます。硬い野菜はゆでる、蒸すなどして食べやすくします。
ブロッコリーなどは大量に与えると胃腸を刺激する可能性があります。かぼちゃも糖質とカロリーがあるため、「野菜だから無制限」ではありません。
与えやすい果物
りんご、バナナ、いちご、ブルーベリー、メロンなどは、種、芯、硬い皮を除き、小さく切って少量与えられます。果物は糖分が多いため、肥満や糖尿病の犬では特に注意します。
りんごの種や果物の大きな種・核は取り除きます。種や核には有害成分や消化管閉塞の危険があるものがあります。
与えてはいけない野菜・果物
玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、ニラなどのネギ類は、加熱しても犬に安全にはなりません。スープ、だし、ハンバーグ、カレーなどに混ざった形も避けます。
ブドウとレーズンは犬の腎障害につながる可能性があり、安全な量を家庭で判断できません。皮なし、種なし、加熱済みでも与えないでください。

卵を与えるとき
卵は、味付けせず中心まで加熱し、少量与えられます。ゆで卵や油を使わない加熱卵が扱いやすいでしょう。
生卵には細菌の危険があり、継続的な与え方では栄養上の問題も考慮が必要です。犬だけでなく、家庭内の衛生のためにも加熱します。
卵はカロリーがあり、小型犬に一個丸ごとは多すぎることがあります。食物アレルギーの除去食試験中の犬には、獣医師の指示なく卵を追加しません。
殻は鋭い破片や衛生上の問題があり、家庭でカルシウム源として自己判断で与えないでください。手作り食のカルシウム量は専門的な計算が必要です。
絶対に避けたい人の食べ物
人には一般的でも犬に中毒を起こす食品があります。FDAのペットに危険な品目やASPCAの避けるべき人の食べ物には、次のような食品が挙げられています。
- チョコレート、ココア、カフェイン
- ブドウ、レーズン
- 玉ねぎ、にんにく、長ねぎ、ニラなどのネギ類
- キシリトールを含む食品
- マカダミアナッツ
- アルコール
- 生のイースト生地
- 過度に塩辛い食品
- 脂肪の多い料理
- 骨や串、果物の大きな種・核
キシリトールは、ガムや菓子だけでなく、ピーナッツバター、歯磨き粉、サプリメント、低糖質食品などに入ることがあります。原材料にキシリトール、木糖、birch sugarなどの表示がないか確認してください。
危険食品を食べた可能性がある場合、症状が出るのを待たず、商品名、原材料、食べた量、時刻、犬の体重を確認して動物病院へ連絡します。自己判断で吐かせないでください。

安全に与える手順
人用食材を試すときは、次の順で確認します。
- 犬に有害な食材ではないか調べる
- 持病、療法食、薬との相性を獣医師へ確認する
- 塩、油、糖、香辛料を使わず別調理する
- 肉・魚・卵は十分に加熱する
- 骨、種、芯、串、包装を完全に除く
- 喉に詰まらない小ささに切る
- ごく少量から与え、数日間体調を見る
- 一日のカロリーに含めて主食量を調整する
一度に複数の新しい食材を試すと、嘔吐、下痢、かゆみが出たときに原因を特定しにくくなります。食材、量、日付、便や皮膚の状態を記録してください。
食事中にむせる、丸飲みする犬には、硬い塊や丸い食材を与えません。与える間は見守り、多頭飼いでは取り合いを防ぐため別々の場所で与えます。
人の料理から取り分けるのではなく、味付け前の食材を犬用に少量分けて加熱すると、調味料やネギ類の混入を防ぎやすくなります。
おやつは目的と量を考えて選びましょう
ごほうびやコミュニケーションに便利なおやつですが、与えすぎると主食とのバランスが崩れることがあります。大きさや原材料、カロリーを確認して、適量を楽しみましょう。
いつから与えられるか
「何か月から人の食べ物を与えてよい」という一律の開始時期はありません。子犬は成長のために、エネルギーだけでなく、たんぱく質、カルシウム、リン、脂肪酸などを適切な割合で必要とします。
離乳後は、月齢と成犬時の体格に合う子犬用の総合栄養食を基本にします。人の食べ物でお腹が満たされると、成長に必要な主食を十分に食べられなくなる可能性があります。大型犬の子犬では、自己判断のカルシウム追加も骨格の成長へ悪影響を与えることがあります。
トレーニング用のおやつが必要なら、一日の子犬用フードから粒を取り分けて使う方法があります。新しい食材を使う場合は、ワクチンや健康相談の際に獣医師へ確認してください。
子犬が嘔吐や下痢をすると脱水や低血糖が進みやすいことがあります。新しい食材の後に症状が出たら、早めに相談します。
持病がある犬は要確認
健康な犬に少量なら食べられる物でも、病気や治療内容によっては避ける必要があります。
- 膵炎・高脂血症:脂身、皮、チーズ、脂の多い魚など
- 腎臓病・心臓病:塩分、リン、たんぱく質などの個別調整
- 糖尿病:糖分、炭水化物、食事時刻との関係
- 食物アレルギー:除去しているたんぱく源や味付き薬
- 尿路疾患:療法食のミネラル設計を乱す追加食
- 肥満:人の一口でもカロリー過剰になりやすい
- 歯科疾患:硬い物や冷たい物で痛みが出る可能性
療法食は、ほかの食べ物を加えると期待する栄養設計が崩れる場合があります。「一口だけ」でも治療へ影響することがあるため、家族全員でルールを共有してください。
人の食べ物のよくある質問
- 犬は毎日ささみを食べてもよいですか?
-
ささみ自体は加熱して少量与えられますが、ささみだけでは必要な栄養を満たせません。総合栄養食へ毎日大量に加えると、カロリーと栄養バランスが崩れます。主食の10%以内を目安に、持病があれば獣医師へ確認してください。
- プレーンヨーグルトなら安全ですか?
-
無糖、無香料、キシリトール不使用でも、乳糖や乳たんぱくで下痢やかゆみが出る犬がいます。少量から試し、体調に変化があれば中止します。胃腸の治療目的で自己判断して与えないでください。
- 食パンを少しなら与えてもよいですか?
-
具のないプレーンな食パンを少量食べても問題になりにくい犬はいますが、栄養上必要ではありません。レーズン、チョコ、玉ねぎ、にんにく、キシリトール入りは危険です。生のパン生地は与えてはいけません。
- 肉や魚は生のほうが栄養がありますか?
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生肉や生魚には細菌、寄生虫などの危険があり、家庭内の人へ感染が広がる可能性もあります。味付けせず中心まで加熱し、骨を完全に除く方法が安全です。
- 犬が人の食べ物を誤食したらどうしますか?
-
商品と原材料、量、時刻、犬の体重を確認し、すぐ動物病院へ連絡します。チョコレート、ブドウ・レーズン、ネギ類、キシリトールなどは、症状がなくても待たないでください。塩やオキシドールで吐かせるのは危険です。
安全確認して補助的に与える
犬が食べられる人の食材には、味付けせず加熱した脂肪の少ない肉、骨を除いた魚、加熱卵、白米、一部の野菜や果物などがあります。無糖・無香料・キシリトール不使用のヨーグルトを食べられる犬もいますが、乳糖への反応には個体差があります。パンは必須ではなく、具材とカロリーに注意が必要です。
どの食材も、塩、油、糖、香辛料を加えず、骨・種・芯・串を除き、喉に詰まらない小ささにします。主食は犬の年齢と状態に合う総合栄養食を基本とし、人の食べ物とおやつは一日の摂取カロリーの10%以内を上限目安にしてください。
チョコレート、ブドウ・レーズン、ネギ類、キシリトール、マカダミアナッツ、アルコール、生のイースト生地は避けます。子犬、持病や食物アレルギーがある犬、療法食や薬を使う犬は、少量を試す前にも獣医師へ相談しましょう。

