優雅で美しい姿が魅力的なボルゾイ。
しかし、ネットで検索すると「ボルゾイはかわいそう」という言葉を目にすることがあります。
過去に報道された事件の影響で、怖すぎ、あるいは気持ち悪いといったネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。
また、その独特な性格や潜在的な危険性から、ボルゾイはしつけが難しいのではないかという懸念や、寿命が短命であるという話も、これから家族に迎えたいと考える人にとっては大きな不安要素でしょう。
さらに、どこか高貴な雰囲気から金持ちの犬という印象も強く、実際の値段や、ボルゾイはなぜ高いのか、そしてかわいい子犬の時期から育てた場合のボルゾイの生涯費用はいくらになるのか、といった経済的な心配も尽きないものです。
この記事では、そうした様々な疑問や不安に一つずつ丁寧にお答えし、「ボルゾイはかわいそう」というイメージの背景にある真実と、彼らと幸せに暮らすために本当に必要なことを解き明かしていきます。
- ボルゾイが「かわいそう」と言われるイメージの背景
- 性格や寿命に関する正しい知識
- 飼育に必要となる具体的な費用
- 安全に暮らすためのしつけと注意点
ボルゾイがかわいそうと言われるイメージの真相
- 報道された事件で広まったイメージ
- ネットで見かける「気持ち悪い」の正体
- その大きさから「怖すぎ」と思われる側面
- かわいい見た目とクールな性格のギャップ
- ボルゾイの寿命は本当に短命なのか
報道された事件で広まったイメージ
ボルゾイに対してネガティブなイメージを持つ人がいる背景には、過去にメディアで報道された飼育放棄の事件が影響していると考えられます。
劣悪な環境で飼育されていたボルゾイの姿が報道されたことで、「かわいそう」という印象が強く残ってしまったのです。
このような報道は、人々の関心を集め、結果的に動物虐待の問題を社会に知らせるきっかけになることもあります。
しかし一方で、犬種そのものに対する誤解や偏見を生むことにも繋がりかねません。
ある事件では、コメンテーターが「飼えなくなったら保健所や協力してくれる人がいる」といった趣旨の発言をし、物議を醸しました。
この発言は、飼育放棄を安易に捉えているとの批判を呼び、保護活動の現場の実態とはかけ離れているという指摘が多くなされました。
保護団体は、決して喜んで犬を引き取っているのではありません。
行き場のない命を救いたい一心で、経済的にも労力的にも大きな負担を抱えながら活動しているのが現実です。
これらのことから、ボルゾイが「かわいそう」というイメージは、犬自身に問題があるのではなく、無責任な飼い主による飼育放棄や、それを取り巻く社会の認識のズレから生まれている部分が大きいと言えます。
ネットで見かける「気持ち悪い」の正体
一部のウェブサイトやSNSで、ボルゾイに対して「気持ち悪い」という否定的な感想が見受けられることがあります。
このような感情は、ボルゾイの持つ独特な外見的特徴に起因する主観的な印象である場合がほとんどです。
ボルゾイは、非常に細く引き締まった体に、長く伸びたマズル（鼻先から口までの部分）を持つ、特徴的な容姿をしています。
特に、他の犬種を見慣れている人からすると、その極端に細い体型や面長の顔つきが、見慣れないものとして奇妙に映り、「気持ち悪い」という感想に繋がることがあるのかもしれません。
しかし、これは犬種としての評価ではなく、あくまで個人の好みの問題です。
ボルゾイの体型は、オオカミなどを狩る猟犬として、広大な土地を疾走するために何世紀にもわたって改良されてきた結果です。
無駄のない筋肉と長い四肢は、驚異的なスピードと持久力を生み出すための機能美の現れであり、その犬種の歴史と役割を物語っています。
したがって、一部で囁かれる「気持ち悪い」という言葉は、ボルゾイという犬種の本質的な価値を下げるものではなく、単にそのユニークな外見に由来する一部の人々の感想に過ぎない、と理解しておくのがよいでしょう。
その大きさから「怖すぎ」と思われる側面
ボルゾイが「怖すぎ」という印象を持たれるのは、その大きな体格が主な理由です。
ボルゾイは大型犬に分類され、成犬になると体高が70cmを超え、立ち上がると成人男性の胸元に達することもあります。
この圧倒的なサイズ感が、犬に慣れていない人にとっては威圧的に感じられ、「怖い」という感情に繋がるのです。
また、ボルゾイは元々オオカミ狩りのために活躍していた猟犬であり、その力は非常に強いです。
散歩中に小動物など興味を引くものを見つけた際、瞬間的に強く引っ張ることがあり、大人の力でも制御が難しい場面があります。
こうしたエピソードが、「ボルゾイは危険で怖い犬」というイメージを補強している面もあるでしょう。
ただ、実際のボルゾイの性格は、その見た目の印象とは異なり、非常に穏やかで落ち着いていることが多いです。
家の中では物静かに過ごし、無駄吠えも少ない傾向にあります。
見知らぬ人には警戒心を示すこともありますが、家族に対しては深い愛情を注ぐ優しい家庭犬としての側面も持っています。
要するに、「怖すぎ」というイメージは、主に外見の大きさと潜在的な力の強さから来るものであり、性格そのものが攻撃的であるわけではありません。
飼い主がその力を理解し、適切なしつけと管理を行うことが、周囲に不安を与えず、安全に共生するための鍵となります。
かわいい見た目とクールな性格のギャップ
ボルゾイの大きな魅力の一つは、その優雅で「かわいい」と表現される美しい容姿にあります。
流れるような被毛としなやかな体つきは、まるで芸術品のような気品を漂わせています。
しかし、その見た目から想像されるイメージと、実際の性格との間には少しギャップがあるかもしれません。
ボルゾイは、他の多くの犬種のように、常に飼い主にベタベタと甘えたり、感情をあからさまに表現したりするタイプではありません。
彼らは独立心が強く、穏やかで落ち着いた性格をしており、どちらかと言えばクールで控えめな態度を示すことが多いです。
もちろん飼い主への愛情や信頼は深く、静かに寄り添うことでその気持ちを表しますが、その表現は非常に繊細です。
この性格のギャップが、飼い主によっては「自分に懐いていないのではないか」「愛情がないのでは」という寂しさや誤解に繋がり、結果として「満たされていないように見えてかわいそう」と感じさせてしまう一因になることがあります。
しかし、これはボルゾイが持つ犬種本来の気質です。
過度な干渉を好まず、静かで安定した環境の中で信頼関係を築くことを望みます。
彼らのクールな振る舞いは、愛情がないのではなく、彼らなりの愛情表現の形なのです。
このギャップを理解し、ボルゾイらしいコミュニケーションの方法を受け入れることが、彼らとの豊かな関係を築く上で大切になります。
ボルゾイの寿命は本当に短命なのか
ボルゾイの平均寿命は7年から10年とされており、この数字だけを見ると「短命」だと感じる人も少なくないでしょう。
特に、15年以上生きることも珍しくない小型犬と比較すると、その差は歴然としています。
この寿命の短さが、ボルゾイを「かわいそう」と感じさせる要因の一つになっているのは事実です。
しかし、この寿命はボルゾイだけが特別に短いわけではなく、大型犬全体の傾向として見られるものです。
一般的に、犬は体のサイズが大きくなるほど平均寿命が短くなる傾向にあります。
グレート・デーンやアイリッシュ・ウルフハウンドといった他の大型犬種も、同様に寿命が比較的短いことで知られています。
また、ボルゾイは大型犬特有の健康上のリスクを抱えやすい犬種でもあります。
特に注意が必要なのが、命に直結する可能性のある「胃拡張・胃捻転症候群」や、関節に問題を引き起こす「股関節形成不全」などです。
これらの病気は、ボルゾイの健康寿命や全体の寿命に大きく影響を与える可能性があります。
これらのことから、ボルゾイの寿命が比較的短いことは事実ですが、それは犬種特有の宿命とも言えます。
飼い主ができることは、日頃からバランスの取れた食事や適切な運動を心がけ、定期的な健康診断を受けることで、病気のリスクを減らし、できる限り長く健康でいられるようにサポートしてあげることでしょう。
「ボルゾイはかわいそう」とならないための飼育の覚悟
- 子犬のうちから知るべき危険性と対策
- ボルゾイはしつけが難しいという噂は本当？
- ボルゾイの値段と金持ちと言われる背景
- そもそもボルゾイはなぜ高いのだろうか
- 気になるボルゾイの生涯費用はいくら？
- 結論：ボルゾイをかわいそうにしないために
子犬のうちから知るべき危険性と対策
ボルゾイを家族に迎えるにあたり、その愛らしい子犬の姿の奥に秘められた、猟犬としての本能と潜在的な危険性を正しく理解しておくことが不可欠です。
ボルゾイはサイトハウンド（視覚ハウンド）に分類され、視覚で動くものを捉え、俊足で追いかけるという強い狩猟本能を持っています。
この本能は、日常生活において予期せぬ形で現れることがあります。
例えば、散歩中に猫や鳥、あるいは自転車などが視界に入った瞬間、飼い主の制止を振り切って猛然とダッシュすることがあります。
その力は非常に強く、不意を突かれるとリードを離してしまい、犬が逃走したり、交通事故に遭ったりする危険性も否定できません。
また、ボルゾイの噛む力は20kgを超えるとも言われ、これも猟犬としての歴史に由来するものです。
興奮した状態や恐怖を感じた際に本気で噛んでしまえば、人に深刻な怪我を負わせる可能性があります。
これらの危険性を回避するためには、子犬のうちからの社会化が極めて重要です。
様々な人、犬、物、音に慣れさせ、過剰な警戒心や恐怖心を抱かないように育てることが、将来のトラブルを防ぎます。
同時に、「噛んでも良いもの（おもちゃなど）」と「いけないもの（人の手足など）」を根気強く教え、万が一の事故を未然に防ぐためのトレーニングを行う必要があります。
ボルゾイはしつけが難しいという噂は本当？
「ボルゾイはしつけが難しい」という話を聞いたことがあるかもしれません。
これは半分正しく、半分は誤解と言えるでしょう。
ボルゾイがしつけにくいと言われる理由は、彼らの知能が低いからではなく、むしろその賢さと独立心の強さにあります。
ボルゾイは、単純な命令に何度も従うような作業を好まない傾向があります。
彼らは自分で状況を判断し、行動する能力に長けているため、飼い主からの指示に意味やメリットを感じなければ、従わないことを選択する場合があります。
この頑固とも取れる側面が、「しつけが難しい」という評価に繋がっているのです。
そのため、他の犬種で一般的な、号令をかけて何度も反復させるような訓練方法は、ボルゾイにはあまり向いていません。
力で押さえつけたり、厳しく叱責したりするアプローチは、彼らの繊細な心を傷つけ、かえって飼い主への不信感を募らせる結果になりかねません。
ボルゾイのしつけを成功させる鍵は、一貫性のある態度と、犬との信頼関係を築くことです。
良いことをした時に褒める「ポジティブ・リンフォースメント（正の強化）」を用い、ゲーム感覚で楽しみながらトレーニングを進めるのが効果的です。
時間はかかるかもしれませんが、一度信頼関係を築くことができれば、彼らは飼い主を深く理解し、素晴らしいパートナーとなってくれます。
初心者には確かに挑戦的な面もありますが、その特性を理解して向き合えば、しつけは決して不可能ではありません。
ボルゾイの値段と金持ちと言われる背景
ボルゾイに対して、「金持ちの犬」というイメージを持つ人は少なくありません。
このイメージは、ボルゾイの実際の値段と、その歴史的背景が深く関係しています。
まず、ボルゾイの子犬の値段ですが、ブリーダーから購入する場合、その価格は30万円から50万円程度が一般的な相場です。
血統や親犬のショーでの実績などによっては、これを大きく上回ることもあります。
ペットショップで見かけることは稀で、入手経路が限られていることも、高価なイメージに拍車をかけています。
そして、「金持ち」というイメージを決定づけているのが、その歴史です。
ボルゾイは、かつてロシア帝国の貴族階級に独占的に所有されていた犬種でした。
広大な領地を持つ貴族たちが、オオカミ狩りという特権的なスポーツを楽しむ際のパートナーとして、大切に飼育・改良してきたのです。
その優雅で気品あふれる姿は、まさに富と権力の象徴であり、一般庶民が飼うことは許されていませんでした。
ロシア革命によって多くのボルゾイがその運命を絶たれましたが、一部が欧米に渡り、その血統が守られました。
このような「高貴な身分の人々だけに許された特別な犬」という歴史的背景が、現代に至るまで「ボルゾイ＝金持ちの犬」という強いパブリックイメージを形成しているのです。
そもそもボルゾイはなぜ高いのだろうか
ボルゾイの値段が高いのには、前述の歴史的イメージだけでなく、繁殖や飼育にまつわる現実的な理由が存在します。
希少性が高いことに加え、ブリーダーが健全な子犬を育てるまでにかかるコストが、価格に反映されているのです。
第一に、ボルゾイは大型犬であり、その繁殖と育成には相応の費用と手間がかかります。
母親となる犬の健康管理はもちろん、一度に生まれる子犬の数は限られており、その子犬たちが健康に育つための食事代、ワクチン代、医療費なども決して安くはありません。
第二に、ボルゾイの健全な育成には、広々とした飼育スペースが不可欠です。
元来、広大な草原を走り回っていた犬種であるため、運動能力を十分に発揮できる環境がなければ、心身ともに健康を保つことが難しくなります。
日本の住宅事情を考えると、このような環境を確保できるブリーダーは限られており、これも希少性を高める一因となっています。
第三に、日本国内におけるボルゾイの飼育頭数自体が多くありません。
そのため、健全な血統を維持するための繁殖計画は慎重に行われ、市場に流通する子犬の数も自然と少なくなります。
需要に対して供給が少ないことも、価格が高くなる要因の一つです。
これらの理由から、ボルゾイの価格は、単なるブランドイメージだけでなく、健全な犬を世に送り出すための必要経費が反映された、正当なものであると考えられます。
気になるボルゾイの生涯費用はいくら？
ボルゾイを家族として迎える際、子犬の購入費用以上に重要となるのが、生涯にわたってかかる飼育費用です。
大型犬であるボルゾイは、他の犬種に比べて維持費が高額になる傾向があるため、事前の計画が不可欠です。
ボルゾイの生涯費用は、その寿命（7年～10年程度）や健康状態によって大きく変動しますが、総額で数百万円に達することも珍しくありません。
以下に、主な費用の内訳と目安を示します。
| 費用項目 | 月額目安 | 年額目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 食費 | 10,000円～15,000円 | 120,000円～180,000円 | 体格やフードの品質により変動します。関節ケアなどの機能性フードは高価になる傾向があります。 |
| 医療費 | – | 50,000円～150,000円 | 年1回のワクチン、フィラリア・ノミダニ予防薬、定期健診など。病気や怪我の際は別途高額な治療費が必要です。 |
| 消耗品費 | 2,000円～5,000円 | 24,000円～60,000円 | トイレシート、シャンプー、歯磨き用品など。 |
| トリミング代 | 5,000円～10,000円 | 60,000円～120,000円 | 長毛種のため定期的なケアが必要です。自宅で行うことで費用を抑えることも可能です。 |
| その他 | – | – | ペット保険料、おもちゃ代、トレーニング費用、緊急時の医療費など。 |
ご覧の通り、毎月のランニングコストだけでも数万円単位の出費が見込まれます。
特に、ボルゾイがかかりやすい胃捻転や股関節形成不全などの病気になった場合、手術や長期的な治療で一度に数十万円以上の費用が必要になることもあります。
こうした万が一の事態に備え、ペット保険への加入を検討することも、賢明な選択肢の一つです。
これらの経済的負担を理解し、長期的な見通しを立てることが、ボルゾイと飼い主の双方が幸せに暮らすための大前提となります。
結論：ボルゾイをかわいそうにしないために
この記事では、「ボルゾイはかわいそう」というイメージの背景から、その性格、飼育の難しさ、そして生涯にわたる費用まで、多角的に解説してきました。
ボルゾイと幸せに暮らすためには、飼い主の深い理解と揺るぎない覚悟が何よりも大切です。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 「かわいそう」というイメージは無責任な飼育事件の報道が影響している
- 性格はクールで穏やかだが非常に繊細である
- 独立心が強くベタベタしないため懐いていないと誤解されがち
- 7年から10年という寿命は大型犬としては平均的
- 胃捻転や関節疾患など大型犬特有の病気にかかりやすい
- 猟犬としての本能から動くものに強く反応する危険性がある
- 子犬の頃からの社会化トレーニングが事故防止の鍵
- しつけは賢いが頑固な面もあり根気と信頼関係が求められる
- 購入費用は30万円から50万円が相場で決して安くはない
- ロシア貴族の犬という歴史が「金持ち」のイメージを形成
- 生涯費用は数百万円に達する可能性があり経済的負担は大きい
- 毎日の十分な運動と広い飼育スペースが心身の健康に不可欠
- その大きさや力強さを制御できる体力と知識が必要
- 安易な気持ちで飼うと犬も人も不幸になる可能性が高い
- ボルゾイを「かわいそう」にするかどうかは全て飼い主の責任にかかっている
